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発熱のこと(2)(2020.02.25)

新型コロナウイルスの感染拡大により体温の測定が感染の予知に重要になっています。発熱はウイルスに対して人間が闘う免疫反応を反映したものであり、それ自体悪いものではありません。また、解熱剤を服用して体温の上昇がおさまっても感染そのものが治ったり、一時的に軽快しているわけではありません。

では体温がどの程度上昇すれば発熱と言えるのでしょうか?実は厳密な定義はありません。その大きな理由は測定の部位や方法で温度に違いがあること、特に体表で測定する腋窩温度温度には個人差が生じるからです。正確な体温の測定はこのHPの深部体温についての記事をご覧ください。深部体温で通常より0.8-1.0°C高ければ発熱していると言えます。腋窩でも通常より1度高くて、倦怠感や、関節痛などの発熱の随伴症状(これも免疫反応の一つです)があれば発熱と判断されます。

口腔内温度は推奨される家庭での体温測定の方法ですが、衛生面や感染拡大予防の観点からは体温計を別にしない限りはお勧めできない方法です。腋窩温度は今の体温計は予測のアルゴリズムで算出しているため発熱時にはあまりお勧めできない方法です。発熱が、あるあるいは疑えば面倒でも5分や10分で測定するモードが体温計にありますから、できればそれをお使いください。特に症状のない人であれば健康チェックのため数十秒で測定できる方法で十分だと思います。ここで自分の腋窩温度の通常の状態、すなわち平熱を知っておくことは大事で、これより1度も上がっていれば発熱のサインだと言えます。

発熱は感染症の悪性度をそのまま反映するわけではありません。発熱は、発熱物質と呼ばれるもの例えば細菌やウイルス、間違って入った異物や化学物質、また自分自身の免疫反応の過程ででも産生される物質によっておこります。例えば、大腸菌の壁の成分であるリポポリサッカライドは強力な発熱物質で短時間で高熱が出ます、一方コロナウイルスなどでは体内でウイルスが増殖してこないと熱の上がりは小さく初期段階では体温のみではわからないことがあります。

先に述べましたように、解熱剤は感染症を解決するものではありません。発熱そのものが免疫反応を増強するといった実験的な証拠はありますが、今なお発熱そのものの治療(解熱剤の投与)を積極的に行うべきか否かは明確ではありません。しかし、長期の発熱は高いエネルギー消費のため抵抗力を低下させること、高齢者や小児では脳神経症状を起こす可能性があり解熱剤の使用は必須です。

体温の測定は、臨床症状の観察とともに感染症の発症や治癒の過程を知るために重要かつ簡単な方法です。しかし、感染症そのものを分別するには力不足です。ただし、新型コロナウイルスでは継続的かつ遷延する発熱がみられる(熱型)ようですので、自宅で様子を見るにしても重要な情報となります。現在インフルエンザのような診断キットはなく、新型コロナウイルスはウイルスそのものを、無毒化した上で一部の部分を測定機械の中で増殖させるPCRという方法で診断されているようです。肝炎ウイルスはインフルエンザと少し似ていて、通常の肝炎の有無は血液の抗体検査だけで割と簡単に行い、肝炎にかかっている患者さんにいる肝炎ウイルスの活動性や治療効果を知るにはPCRを用います。ただしPCRはいくつかのステップを手作業でやる方法で一般的な臨床検査とは言えないと思います(実験室ではよく使う方法ですが、もちろん感染性の物を扱うときはそれなりの場所を必要とします)。新型コロナウイルスは有無を知るのにいきなりPCRから始めないといけないのです。テレビを見ているとキャスターの皆さんが、何やってんだ、つべこべ言わずに早くやれ!と叫んでおられました。確かにそうしたらいいのですが、手間もコストも場所も機械も必要な検査ですのでちょっとした疑い程度でやるのは難しいでしょうし、現場は疲弊し混乱を産みます。限られた資源を有効に使うというスタンスでの冷静な発言が必要です。

何はともあれ、人混みをできるだけ避ける、日頃の手洗い、咳エチケットと同様に、ぜひ体温の測定は簡単な健康管理方法ですから、自分の平熱をまず知るのは大事です。そして体温上昇とその経過を見て闇雲に慌てない自己管理、しかるべきタイミングでの医療機関への相談をしていただければと思います。