コア温(Core温:核心温、深部体温)とは?

人は非常に体温調節に優れた動物です。ではなぜ熱中症になったりするのでしょうか?この原因は、実は人が体温調節に強いという事実があるからなのです。この矛盾する記述の理由は後述しますが、これを考える上で、コア温(核心温、深部体温とも呼ばれます)という概念が非常に重要になってきます。人は恒温動物であるとともに、内温動物と呼ばれます。一般に内温動物とは自身の作る熱によって体の内部の温度(深部体温)を高く保つことのできる動物を指します。内温動物は一般に体のサイズが大きく、このため環境の温度変化も関わらずコア温を一定に保つ能力があると言えます。一方、恒温動物でも体の小さい動物は環境温度に依存してコア温が変化する、いわゆる外温動物に分類されます。

人の体温調節。恒温動物であり、かつ内温動物である人は、環境に左右されない優れた体温調節能を持つと言えます。しかしながら、激しい運動による過剰な熱の産生や過度な環境温度の上昇は深部体温を上昇させてしまいます。多くの動物は運動を停止させることによって深部体温の上昇を防ぎます。また、日陰や水際へ逃れてじっとすることで危機を回避します。ところが人ではどうでしょうか?暑くても運動を続けたり、がんばって肉体労働をしたりと、非常に我慢強い生き物です。この我慢強さは、人が発汗という非常に優れた体温調節システムを持っているからです。発汗は、汗を蒸発させることによって(気化)、体から大きな熱を奪います。このため自分の深部体温より高い環境ですら、運動を可能にするのです。

発汗の限界。発汗は優れた体温調節機構です。しかし限界があります。脱水は発汗を抑制します。また、それ以前に、発汗はエネルギーを使った反応です。いくら水を飲んでも無尽蔵に発汗が続くわけではありません。多量の発汗は発汗疲労という現象を引き起こします。さらにもっと大きな問題は、湿度や衣服の問題です。汗は気化しないと何の役にも立ちませんから、高湿度や汗が蒸発しないような衣服では深部体温は上昇を続けるのです。いわば、汗への過信が、人を熱中症に導いているとも言えます。ただ、暑い環境で運動や労働を完全にやめてしまうという対策は難しそうです。

熱中症のリスクのある労働や運動の現場において、ヒトを健康障害から守るために強固な防波堤となるコア温のモニタリングが非常に重要です。
コア温は脳などの重要な内臓の温度であるため、活動中のヒトで直接測定するには多くの課題があります。コア温に対して、皮膚や皮下組織など身体の表層に近い部分の温度は被核温(シェル温)と呼ばれ、環境の影響を受けて大きく変動します。コア温の正確な測定には、シェル温の影響を受けないことが要求されます。
バイタレートが採用する鼓膜温測定は、アプローチの容易さと正確性から理想的なコア温の推定方法です。鼓膜裏面には脳への血管の分岐が分布しており、鼓膜温はその血液温を反映します。
鼓膜から発生する測定する赤外線センサーは、鼓膜に対して非接触で間便、安全、正確な温度測定を可能としています。